●湧き上がるものを邪魔をするな!

2024/10/01

今日は、楽器で、いいピッチで演奏する
には?そしてサックスのいい音色とは?
に付いて、に続いて、歌心を表現して、
感動的な演奏にするには?について考え
てみよう。

散歩をすると、犬を連れて散歩して
いる人を良く見かける。犬は、とても
賢くまた人間に対しても忠実である。

忠犬ハチ公の物語も有名だがその忠誠心
は人間にもまねできないところがある。
犬の優れた能力は、嗅覚。

人間の2000倍ともいわれるその嗅覚は、
電柱に残されたオ●ッコの匂いから、
雄か雌か、若いのか、年取っている
のか、健康なのか病気なのかなど、あ
らゆる情報を瞬時に読み取る。

さて我々は音楽にかかわっているので、
人間もほかの動物も、相手の声から
いろいろな情報を感じ取ることを知っ
ている。それが洗練された方法が音楽。

特に歌い手はその生まれついての声
が素材となるので、声を聴くと女性
か男性か、若いか、年配者なのか、
歌はうまいのか下手なのか?その表現
は味わい深いか、薄味なのか、
まったく味はないのか?聞けばわか
るわけだ。

僕は、音楽業界で長いこといろいろ
な有名な歌い手さんとご一緒してきた
ので、その凄さは多くの人より多く
知っているといえるだろう。歌い手
は、見た目やいろいろな要素がある
とはいえ、その声自体で、何千人、
何万人のファンを呼び寄せる。
凄いことだ。

僕の経験の中でいろいろな偉大な歌
手の皆さんを思い出すが、西武球場
3万人コンサートを10年続けて満席に
した渡辺美里さんのステージをご一緒
できたのはすごいラッキーな経験
だった。

打ち上げで30センチの距離で、彼女
の歌う、矢沢の「時間よとまれ」は
あまりにも素晴らしいハスキーボイ
スに鳥肌が立ったものだ。美里さん
20歳、僕は34歳だった。

昨年もサックスマシーンズのゲストと
して歌ってもらっていた、植垣麻衣子
さんも同じような、大化けするカリス
マ的声質の持ち主。おまけに麻衣子
さんは作曲の才能も凄いので、株なら
将来何千倍にも大化けする有望銘柄と
僕は踏んでいる。

ファンはなぜ集まって来るのか?
それはその歌声が聞いていて気持ち
が良い、感動する、歌声と歌詞の世界
に酔いしれたいから来るのだろう。音
楽の世界で動くお金の90数パーセントは
歌の世界で動き、楽器はその伴奏として
の存在が始まりであり、またその相互
作用で発展してきたといえるだろう。

ジャズ、ロックサックスの吹き方を教
えて生業にしてきた僕はある日、スタン
ダードを演奏するなら、歌詞くらい歌え
たり理解できないとおかしいのではと
気が付き、スタンダードナンバーを
演奏するとき、最低でも訳詞はチェ
ックするようになった。

現代の日本の歌手で特に注目する
のは、藤井風とADOである。特に最近の
ADOの曲つくりと歌唱力、武道館での
アニメーションと効果的な照明による
ステージは圧巻で、海外公演も大成功
している由、大納得である。彼女の
歌唱力は、偉大なR&Bシンガー、
チャカカーンや、アレサフランクリン
に匹敵すると感じている。

人間の声に一番近い楽器といわれる
サックス。ではサックスの演奏には、
歌心が必要なのはその通りである。
どうしたら歌心が発揮できるのだ
ろう。まず考えられるのは、うまい
歌い手を真似することであろう。

マイルスデイビス自伝を読むと、
若きマイルスは、ビリーホリディ、
フランクシナトラをよく聞いて、
トランペットの吹き方に参考にして
いたとある。うまい歌い手や豊かな
ビブラートのバイオリンなどと共演
すると、自分のサックスやフルート
で同じか負けない表現の演奏をする
にはとよく考える。

では、僕が、教室で、例えば、
Fly me to the moon を教えている
ところを少し再現してみようか?

●いろいろな歌い手の同曲をまず
聞いてみる。

●歌詞カードを見ながら一緒に歌
ってみる。

●今度はドレミでメロディを歌
い、実際に指を動かして、ドレミ
の通りに指が動くまで練習。

●ちゃんと指が動いたら、楽器を
もって練習する。頭の中に歌詞も歌え
たらベターだ。

歌詞は女性の歌詞なので、受け身
の表現で書かれている。・・・
して頂戴。私を・・して。という
具合。女性は花、男性は蝶という
設定。

●具体的には、メロディが下がっ
てくる場所は、デクレッシェンド
(だんだん弱くする)、上がるとこ
ろは、クレッシェンド(だんだん
強くする)、そして俗に白玉という
長く伸ばす音は、基本はデクレッ
シェンドにして、2小節以上にわ
たる白玉は、クレッシェンド+
デクレッシェンドを試すように
指示する。

こういう抑揚(ダイナミクス)を
付けてゆくと、だんだん自分が曲
に没入して、自分で感動すると
ところまでくる。

ほかの書き込みでも書いたが、
一流の演奏や歌唱は、聞きながら
過去の思い出が蘇ったり、自由な
空想、幻想の世界を遊ぶことが
できる。

何も考えなくてもオートマチッ
クに自分が演奏している境地に
なったら、自分の人生経験と
いま出している音や声とを
リンクさせる。

つまり自分の人生の中で、一番
感動的なシーンや、大いなる愛
を貰ったり、人生最大の愛を放出
している瞬間を思い出す。その
思いを音に、声に乗せてみる。

コツは、頭で考えて操作しない、
流れに身を任せる、中から湧いて
くるものを邪魔しない、これだけ
で、君は感動的な演奏や歌唱をして
いるだろう。良い一日を。