●ガサついた音を出せ!

2024/10/01

先日のウォールの投稿で、下手すぎて、
自分の演奏から逃げ出したくなる・・
云々に共感する人が多いのに気が付く。

逆に言うと、1円もお金が儲かるはず
もない趣味である演奏技術にそれだけ
上達したいと思っている人が多いと
いうことに驚く。

上手くなってみんなに称賛されたいし、
自分でも満足したい。。解るなあ。

スポーツでも、武道でも学問でもなん
でもそうだけど、まずは自分の目で
確かめて、自分で選んだ、一流で
自分と価値観の合う師匠に学ぶのが
最上である。

山にこもったり、自宅でひたすら練
習して天才的にうまくなる人も数万
人に一人くらいは、居るかも知れな
いけれど、

植物が種から芽が出て大木まで育つ
のに、日光、水、周りの環境が必要
なように、
人間だって赤ちゃんから大人になる
過程で、お母さんの愛情、学校の先生
や友達、そしてある特定の職業や技能
には専門のコーチが必要なように、
ブルージャイアントのように、河原で
練習してすごいアーティストになると
いうのは完全なファンタジーである。

ジャズ、ロック、ブルース、クラシッ
クもそうだが、リズム(グルーブ)
が大事な音楽で、その専門家である一流
の打楽器奏者(ドラマー)や、ハーモ
ニー、メロディの専門家である一流の
ピアニストなどと長い時間一緒に演奏
して、体でそのやり方を吸収して自分
なりに発展させなかったら、一流の
サックス奏者が出来上がるはずも
ない。

今日は、ジャズ、ロックのサックス
にはどういう音が求められるのかに
ついて、経験から少し話してみよう。

まずサックスには2種類の吹き方が
あり、どちらが良いとか悪いという
ことはない。

それはクラシック奏法とジャズ奏法
であり、流派が違い、価値観、美学
が全く違うのである。

なぜ、オーケストラには通常サック
ス奏者はいないのか?音が目立ち
すぎるからである。トランペットや
トロンボーンだって派手な音は出る
が、ある意味ちゃんと調和は取れて
いるのであって、クラシック奏法の
サックスの音は、弦楽器を理想と
しているように聞こえるし、現に
ビブラートの回数まで合わせると
聞く。

僕の教えたサックスの生徒さん
が、吹奏楽では、音色が目立ちす
ぎるので、もっと溶け込むような音
を出せと言われるそうだけど、それ
は目立つようなジャズの音を出す
吹き方を教えているので、無理も
ないことで、ジャズのビッグバン
ドか、コンボ演奏をした方がよい。

唇の作り方や、音色の概念が正反対
なので、クラシック奏法をジャズ
奏法に直すのはだいぶ努力がいるだ
ろうし、まずは頭の中の価値観の入
れ替えが必要だろう。

また、日のよって、曲によって、
クラシック奏法とジャズ奏法を
両立させようと考える人もいる
だろうが絶対無理だと断言しよう。
いづれかを選ぶしかない。

念のため、クラシックサックスの
音は、聞くのは大好きです。

音大出のサックス奏者が、卒業は
してみたものの、仕事はないの
に気が付き、しょうがないから
ジャズでもやろうか?という人も
いるようだが、そんなこころ構えで
ジャズがうまくなる訳もなし、しまい
には雑誌に、ジャズ嫌いを直すには?
という特集も見たことがあるが、別
に嫌いな人は、無理して好きになる
こともないと思うが?(笑)

さて、当たり前のことだけど、サッ
クスのベルは外側を向いているので、
基本的に自分には聞こえないと思っ
た方が良い。ただ壁に向かって吹く
と反射音が聞こえる。

ジャズ特有のサブトーンという奏法
があって、これは、アンブシュアの
微妙な調整でマウスピースに、振動
に使わない通過するだけの息を入
れる奏法で、具体的には、昔はやった、
ムードテナーのサムテイラーやシル
オースティンなどを、またスタン・
ゲッツなどのクールな音を想像すれ
ばよいだろう。

コルトレーンのバラードもサブトー
ン奏法である。

音楽の世界もいろいろな流派、いろ
いろな表現があり、クラシックと
ジャズではよい音とされるものが
違う場合がある。多くのサックス吹
きに言いたいのは、このサブトーンを
言うものはいい音、美しい音なんだよ
ということ。これは生でいい音を体験
しないとなかなかわからない。

録音ではいくらでも音のお化粧がで
きてしまうので。

先輩から聞いた話だが、レコーディ
ングスタジオで、歌謡曲のソロを録音
しているとき、サブトーン奏法で演奏
したら、ディレクターに、その風の音
やめてきれいな音で吹いてくださいと
言われたそうな(笑)、ディレクター
は、残念ながら、ジャズの概念がな
かった。

黛敏郎さんは有名な現代音楽の作曲家
だが彼のテレビ番組で、ジャズ屋を
たくさん集めてゲスト出演させたとき、
はい、その汚い音の皆さんこちらです
よと言われたそうな?(笑)だってきれい
な音を出していたら、ジャズになら
ないからね?

一番ヒントになるのは、現代の
ロックギタリストは、最低でも
数個のエフェクターをかまして
いろいろな音が出せるの常識。ひず
ませた音を出したのは、レッドツェッ
ペリンのジミーペイジや、ジミヘン
ドリックスあたりからだろう。イエペ
スの正統クラシックギターから、
ジャズギター、ロックギターと、
いろいろないい音が存在するだろう。

ギターのひずませた音をサックスに
移し替えたのが、先日亡くなった
デイビッドサンボーンで、マイケル
ブレッカーもその影響を受けていて、
現代のサックス奏者には多大な影響
がある。

そうそう、話は横道にそれてばかり
だけど、本筋に戻す。

ジャズサックスの良い音はまず自分
にきれいな音に聞こえたらアウトと
思った方が良い。

自分にガサガサ荒れた音に聞こえ
たら、外で、クラブやホールで反
響した音は、またはマイクに乗せ
てPAした音、録音した音は、
魅力的な音になっていると思えば
よい。

アマチュアのかたは、自分の簡易
的な録音を聞いて、音ががさつい
ていたら、バカボンのパパのように、
~これでいいのだ~と思えばいい。
ピッチとタイミングが良ければ
成功だ。

特に息の混じったスースーした
音は、いい音でとろけてしまい
ますと言われることは間違いない。

女性の声でもヒットする歌手はほぼ
例外なくハスキー成分が声に入っ
ている。

バイオリンの名器ストラデバリ
ウスもそばで聞くとがさついた
音なのだけど、ホールで響かせる
と魅力的な音になるそうである。

サックスに限らず、管楽器や歌手
の方も参考にしてもらえば幸いである。