サックス奏者にとって、自分の音は、
自分の声、自分の顔と同じ。
人間に寿命があるように、音を出す入り
口のマウスピースとリードにも寿命が
ある。リードは植物なので、大事に持
たせても数週間。マウスピースは金属
やハードラバー(ゴムを硬化させたもの)
やプラスティックもある。
金属でもステンレスのような固いもの
から、ジュラルミンや砲金(錫、亜鉛の
合金)まである。テナーの定番、
Otto Link は柔らかい砲金製である。
とてもいい音なのだけど、一生懸命吹く
と寿命は1年くらい。ステンレスだったら
硬いので、ほぼ変形しないので何十年
でもOK。
リードが合わなくなってきて、硬い
リードになってくると、そろそろすり
減ってきたのが解る。今までは毎年買い
換えて新品を購入していたのだが、長年
の研究の成果で、自分で削って調整する
ことができるようになってきた。マウス
ピースを削って再生する人をrefacer
(リフェーサー)という。日本でも数人
しかいないはずだ。僕はリフェーサーと
しての仕事もしている。
http://kose-sax-flute.jp/Sax%20Reface.html
さて、自分のマウスピースを何回も
リフェイスしていたら、チェインバーと
いって内径とのバランスが崩れてきたのを
感じるようになった。そこで内径の方も
削り出したら、息が入り、音が太くなること
が分かった。これを数値化してやったら
大変なことになるが、感覚で少しやっては
吹いてみてを繰り返して、いい感じの音に
なってきた。
面白いので、所持している、別のマウス
ピースも何本か、削って内径を太くして
みた。確かに太い音になる。
面白いのが、内径を太くして息が入るよう
になると、薄いリードが必要になるかと
思いきゃ、逆に少し腰のあるリードが
必要になるのである。これもやって
みないとわからない面白いところ。
今まで寿命で終わったリードをすべて
捨てないで取っておいてある。これは
マウスピースの形状が変わった場合や、
ほかのマウスピースだと使える場合が
あるからである。予測通り、捨てないで
取っておいたリードが大活躍してくれ
そうだ。
特に最近はリードが爆値上がりして
いるので、リサイクルは大事になって
くる。
コルトレーンとか最近鬼籍に入った
ウエインショーターなどは実に個性的
な音をしているが、専門のリフェーサー
が付いていたか本人たちがそういう
知識を持っていたのではないだろうか?
特にコルトレーンの音は独特すぎる。
ともあれ、マウスパッチを厚くして
ハイノートのコツをつかみ、音はいい
のだが、息が入りすぎて、多くの肺活量
が必要と判ったのだが、やはりこの年で
肺活量倍増は無理と悟り(笑)、
パッチは元に戻したが、ハイノートの
自在性はちゃんとマスターしたので、
これで納得の行く、音色とコントロール、
何十年もかかったが、ハイノートのコツ
もつかみ、より頭の中のメロディを楽器
で表現する自由は広がった気がする。
このキャリアでも奏法が進化している
のに自分でも感心する。