菊地康正の音楽教育論

2019/11/20

★今日のテーマ

菊地康正の音楽教育論

音楽教育というと何を思い浮かべるだろうか?幼児教育、小学校、中学校、高校、音楽大学における音楽教育、現在の日本における、一般向けの教育だと、ヤマハ、島村など、大手楽器店の教室などが思い浮かぶ。

僕のように、一介の演奏家が、江戸時代の寺子屋のように、個人の教室として教えているところも有るだろう。

では、何を教えるのか?世界には色々な音楽があり、その形態も、時代により急速な激しい変化を遂げている。

もっとも芸術性、精神性が高いと言われている西洋クラシック音楽を、日本も明治維新以降取り入れて、音楽大学を作り、戦前戦後の歌手は、クラシックに進むか、流行歌手になるかの二択だったという。

淡谷のり子女史は、演歌をレベルの低い音楽として演歌撲滅運動までしていたと言う。現代の感覚からいうと不思議だ。クラシック至上主義の時代だったのだろう。

義太夫も、浪曲も演歌も、現存している音楽は、聴衆が存在する限り世の中に必要な立派な音楽というのが僕の持論。

歴史、政治・経済と音楽は切っても切れない関係がある。アメリカのジャズや黒人の音楽に魅了されて、音楽の道を志した僕は、学んでいくうちに、アメリカの奴隷制度に興味を持った。

どうして、肌に色が違うだけで、有色人種を人間ではなく家畜扱いができるのか?調べて行くうちに、奴隷制度自体は、歴史が深く、昔から、欧州中東、支那では、戦争に勝った国が負けた方を奴隷にするのは当たり前だった。

歴史上最も奴隷売買をしていたのはアラブ人、お隣の韓国では、日本が併合するまでは、奴隷制度が有り、中国は、現在でも一部の特権階級が民衆を奴隷扱いしているとも言える。

話が少しそれた。アメリカ、イギリスで、ブルース、ジャズ、ロックの勃興は、西洋クラシック音楽と黒人の音楽の衝突、結婚と言えるかもしれない。

ビートルズに始まる、ロックをバンドでやる楽しさは、日本では、グループサウンズブームとなった。現在60代の僕の中学生時代にリアルタイムで、ワクワクしたバンドは、ジャッキー吉川とブルーコメッツ、スパイダース、タイガース、ワイルドワンズ、ヴィレッジシンガーズ、オックス、etc。

海外では、フォークのPPM、レッドツェッペリン、ジミーヘンドリックス、ビージーズなどが記憶に残る。マイルスやコルトレーン、ナベサダ(渡辺貞夫)日野皓正のジャズもカッコよかった。あとは、ソウルミュージック。ジェームスブラウン、オーティスレディング、アレサフランクリン、、、。

世界の流れを見ると、日本の音楽の教室に、バッハ、モーツアルトと並べて、エリントン、マイルス、スティビーワンダー、ジョンレノン、プリンスの肖像を並べるのが良いと言うのが僕の持論だ。

音楽にも、時代によって変化する部分と、変わらない部分があると思う。

変わらない部分としては、

★西洋クラシックが積み上げてきた、機能和声、トニックドミナントなどによる、倍音列、コード進行の原理、システム。これは物理法則でもあるので、原理としては未来永劫変わることはないと思われる。未来において、物理法則が変更になれば話は別だが。

★歌心に関する部分。あるメロディを、どのように歌うのか?ダイナミクスのつけ方、ヴィブラートの掛け方、ハートを打つ感動的な歌い方とは??

★変化していく部分としては、その時代その時代に流行るリズムが、ある。例えばスイングジャズのリズムや、初期のロックンロールなどは、今聴くと古臭く感じたりするのは、時代のテンポ感、リズム感と言うものがあって、それにそぐわないと違和感を感じるのではないだろうか。

現在はコンピュータで音楽を作るのは、世の中が、文字通り、誰が支配しているか解らない、AIなど機械にコントロールされている感じを一番表現できるからか?

ここからは、実際に音楽教育に携わる教師向けにヒントを書いてみたい。

★教える側が先ず、音楽を演奏、歌うことに喜びと感動が必要。

感動的に、演奏、歌唱して見せて、生徒にどうしたらそうできるのか?そうなりたい!と意識させるのが一番。教える側が先ず感動していると、生徒は、憧れ、モチベーションを抱き、それが、練習や、教室通学継続の原動力となる。

そのためには、基礎技能を忍耐強く修練すること、そのどのステップも楽しんで行うこと、音楽の基礎知識や技能も大事だが、一番大事なのは感動する心である事を伝える事である。

これは、今までの反省でもあるのだが、プロになりたい人と、アマチュアで楽しみたい人で、扱いを変える事。

理屈の習得よりも、名曲を、かっこよく感動的に歌いたい、演奏したいと言うのが(出来れば少ない練習で)が、アマチュアであるので、曲をたくさんやらせて、楽しい経験、感動の経験をたくさんさせる事である。

★正確な音程で歌ったり、音を当てる能力を音感というが、音楽を目指す人、アマチュアでも楽しみたい人は、この音感を育てる事が肝になる。

これが発展すると、コード感覚となり、作曲やインプロを目指す人は必須の能力である。コード進行感は、脳科学の研究により、言語の文法理解の場所である事がわかっているので、作文、英作文などと並行してやるのが効果が高いのではないだろうか。

★リズム感は、体の動きそのものなので、かっこいい歩き方や踊り方を学んだり、ドラムやベース、ピアノなどを実際に弾いたりうまい人のを見る、可能なら共演するが最上のやり方になる。

★音楽は表現であり、コミュニケーションであるので、発表する事が大事である。ガソリンを入れ続けても、車を走らせなかったら、溢れて流れてしまうだけである。

先生に褒められる事だけを目標にしている人もよく見かけるが、発表会への参加のほか、どういう形であれ、人に聞かせる事を目標にするべきである。

どうしても恥ずかしい、緊張するという人は、アンサンブル、ビッグバンドへの参加などを勧める。

、、、続く。