宇宙は、もし70億人の人がいたら、70億通りの宇宙がある。実際の宇宙に存在する銀河の数は、数千億個と考えられていたが、最近の研究によってその数は、桁違いの2兆個以上であることが判明。
でもそれは、現在の技術で観測できる範囲のことであって、観測できない銀河まで含めるとさらに多くの銀河が存在するということがわかってきた。
我々が所属するこの天の川銀河だけでも端から端まで光の速さ秒速30万キロで移動したとても2万年かかる距離。因みに、太陽までの距離は、光の速さで16分、新幹線なら50年はかかる。
宇宙の果てに行くことはできないが、想像することはできる。想像できる範囲が、貴方の宇宙なのである。想像力は光より速く、宇宙の隅々まで既に到達しているでは無いか?
想像する宇宙のことを情報宇宙といい、現実の宇宙は、物理宇宙と言う。脳は実は、この物理宇宙と情報宇宙を区別できない。
実際五感により、目、耳、鼻、触覚、味覚、第六感により入力した情報を脳で組み立てて自分の宇宙を各自組み立てて宇宙として認識しているのである。
生まれつき盲目の人に手術で光を与えたら、若い人は適応できたが、ある年齢を越すと、光の洪水に、最後まで理解ができず、終いには目を閉じた人がいるという。
若いジャズファンと話していて愕然とするのは、フュージョンて何ですかという人や、若い女性でジャズの演奏を聴くと、高級喫茶店のBGMというイメージが定着していることだ。
僕は演奏家なので、距離を時間で感じる種族である。オスカーピーターソンのトリオは、3人が密集位置で演奏する。これは音の極力タイムラグを短くする工夫である。
音のスピードは秒速で340メートルで、光に比べても亀のように遅い。真近で聞くドラムの音と、5メートル離れて聞くドラムの音は、既にかなり遅れて聞こえる。これが音のスピードだ。大きなコンサートホールでは、モニタースピーカー俗に転がしを聞いてずれないように演奏するのだ。
スイングのリズムで僕がスタンダードを吹いているとしよう。自分では自然にやっていることなのだが、細かいフレーズは、ジャストに、つまりリズムセクションのタイム通りに、歌うフレーズは、レイドバックして吹いているらしい。
自分では自然に思いつくフレーズを歌っているだけなのだが、若いベーシストなどは、僕を聞くとどんどんテンポが遅くなっていくので、僕の出すリズムは聞かず、音楽を聴いてくれといつも言っている。僕は歌い手の立場で自由にやらしてもらうので、彼は伴奏者としてタイトなグルーブを刻んで欲しい。
これは、師匠松本英彦(ts)や、世良譲から、譲り受けた(^^)技法であり、日本人の管楽器奏者では、他にできる人をあまり見ない。
今や日本では、レイドバックとジャストを使い分けて吹ける管楽器奏者は、ほぼ居ないだろうから、これからは僕と共演するリズムセクションは、貴重な学びになる筈だ。
アマチュアでよく勘違いしているのが、リズムセクションより早いタイミングで吹いている、弾いている人。
これは論外で、いくらフレーズや音が良くても、音楽が成り立たない。馬車(メロディ)を馬(リズムセクション)の前に繋いでも、走りようが無いでは無いか?馬は馬車を引っ張るのが仕事なのだから。
時効なので思い出すことは、昔の僕のバンド、サックスマシーンズのチームで、僕のタイム感を理解できる人はいなかったので、レイドバックする僕と、残りの3人が、ジャストビートで、対抗する形だった。
メンバーからは他の3人に合わせてくれという要望が出たが、僕の本音は、僕がリーダーのバンドで、僕の作曲編曲作品をやっているのだから、もう少し理解して合わせて欲しいと言うのが本音だった。
でも、僕は、本当に恵まれた天才的な奏者とばかり演奏経験を積み、特別な経験によってそうなったのだから、そういう経験の無い人たちに、ゴムのように伸び縮みするグルーブの楽しさを伝えることが、僕の使命だったのだ。
その頃は、音楽的にも、人格的にも偉大さがまだまだ足りず、自然に皆を感化するには程遠く、バンドは解散になったのだった。今や偉大になったという意味では無いので誤解の無いように。
音楽の宇宙に関しても、その人の経験した世界だけがその人の宇宙なわけだ。ジャズにしてもロックにしてもクラシックにしてもラテンにしても、グルーブが無ければ、その面白さは全く無い。
その後の若手の奏者たちも、確かに上手いのかもしれないが、グルーブの本質を理解して演奏する人は少ないと感じる。赤坂のドットアンドブルーのオーナー春名さんも同意見だった。外国の有名大学をでても、グルーブするリズムセクション、特に良いドラマーをたくさん経験しなかったら、グルーブが体得できるはずも無いので、無理も無いのだが。
テレビのニュース番組を見ても、バックに流れる音楽は、コンピューターで作られたもので、ドラムやベースらしき音があり、体裁だけは整えているが、命であるグルーブは無く、生演奏を聞かないで、機械で作った模造品で済ますこの国の文化の劣化は寂しい。